生き恥曝しても死に恥曝すな
生きているうちに恥をかいても、死後に残るような恥をかいてはいけないということ。

tozan

帝國軍艦旗――虎髯大尉、本名轟大尉――端艇諸共引揚げられた――全速力――賣れた顏――誰かに似た顏――懷かしき顏  輕氣球と共に、海洋の唯中に落込んだ吾等兩人は、一時は數十尺深く海底に沈んだが、幸にも、落下の速力の割合に緩慢であつた爲と、また浪に氣球が抵杭した爲に、絶息する程でもなく、再び海面に浮び出でゝ、命を限りに泳いで居ると、暫くして、彼方の波上から、人の呼聲と、櫂の音とが近づいて來て、吾等兩人は遂に情ある一艘の端艇に救ひ上げられたのである。今、端艇を出して、吾等の九死一生の難を救つて呉れたのは、疑もない、先刻の白色巡洋艦である。 端艇に引上げられた武村兵曹は、此時忽ち叫んだ。 『おー。矢張左樣だつた! あの巡洋艦のガーフの旗は、我が帝國の軍艦旗であつた※。』と、彼は、今しも、輕氣球から墮落の瞬間に、ちらりと認めた同じ模樣の海軍旗を、此端艇の艇頭に見出したのである。 私も艇中の一同を見て、實に驚き飛立つたよ。 『や! 帝國軍人! 日本海軍々人!。』と叫びつゝ、頭を廻らすと、此端艇を去ること程遠からぬ洋上には、先刻の白色巡洋艦は小山の如き浪に漂蕩しつゝ、其後檣縱帆架と船尾とには、旭輝く大日本帝國の軍艦旗は翩飜と南風に飜つて居つた。 登山 レンタル 真綿に針を包む
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