生き恥曝しても死に恥曝すな
生きているうちに恥をかいても、死後に残るような恥をかいてはいけないということ。

koyobani

 言葉に出して愛をささやかれ、言葉に出して愛を求められる場合は、女性の心は、ピンと張り切っていて、理性が働き感情が冴えて、容易に肯かないものであるが、すべてが行動で、その時と場合との機みに乗って来られたのでは、ちょうど先刻の夕立のように、身を避ける間もなく、濡れてしまうのではないかしら。  準之助氏も嫌いな人ではない。しかし、ああも簡単にはと思うと、新子は、自分のしたことが自分で信ぜられない気持だった。  そうした、いろいろな後の思いに、打ちひしがれていた新子は、準之助氏が帰って来たこともレコードが一時止まったことも、気が付かなかった。  しばらくしてスキーパの「グラナダ」が、その盤の裏にある「プリンセスタ」に、変っているのに、気がついただけであった。  あの曲が、了ったら夫人のところへ行こう。あまり、時が経ち過ぎて、不自然にならない内に、謝りに行こう。しかし、主人とあんな風なことをした後で、謝りに行ったのではと思うと、新子の心は暗かった。  ほんとうは、これを機会に、この家を出た方がいいのではないかしら、それが、準之助氏のためにも、自分のためにも一番いいのではないかしら、自分と準之助氏との関係が、これ以上進まないうちに。 自動車保険
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