hukuyama
ところが、好かつた事には、今旅から帰つたと云ふところなんで、時間を見ると、十時余程廻つてゐるんでせう。※車はもう出ず、気ばかりは急くけれど、若箇道間に合ふんぢやなし、それに話は有るし為るもんだから、一晩厄介に成る事にして、髪なんぞを結んでもらひながら、些と訳が有つて、貴方と一処に当分身を隠すのだと云ふやうに話を為てね、それから丹子の事も悉く言置いて遣りましたら――善い人ね、あの阿母さんは――おいおい泣出して、自分の子の事はふつつりとも言はずに、唯私の身ばかりを案じて、ああのかうのと色々言つてくれたその実意と云つたら……噫、同じ人間でありながら、内の阿母さんは、実に、あなた、鬼ですわ! 私もあの子の阿母さんのやうな実の親が有つたらば、こんな苦労は為やしまいし、又貴方のやうな方の有るのを、さぞかし力に念つて、喜びも為やうし、大事にも為る事だらうと思つたら、もうもう悲くなつて、悲くなつて、如何に何でも余り情無くて、私はどんなに泣きましたらう。 それに、私をばあんなに頼に為てゐた阿母さんの事だから、当分でも田舎へ行つて了ふと云ふのを、それは心細がつて、力を落したの何のと云つたら、私も別れるのが気の毒に成るくらゐで、先へ落付いたら、どうぞ一番に住所を知せてくれ、初中終旅を出行いてゐる体だから、直に御機嫌伺ひに出ると、その事をあんなに懇々も頼んでゐましたから、後で聞いたら、さぞ吃驚して……きつと疾ひでも為るでせうよ。考へて見りや、丹子も可愛し、あの阿母さんも怜いし。吁、吁!」
福山 歯科 ???s?-?μ?A?O‰“?μ