tanasi
鼻の丸い、卵なりの輪郭をした、どこか病的らしい暗黄色の、それでいて、人を食ったような三伝の顔が、いまは仄かに陰火をめぐらす怖ろしげなものになってゆく。そうして、この室には、しんしんと犇みゆくような沈黙が続いてゆく。
「あの男なら、俺らに仕返しをやりかねまいぜ。だが、あいつが生きているとは……。とにかく、ここに四人いるからなア――お女将に、俺に、お悦に、それから左枝だ」
雨が小止みになって、どこかの床の下で、地蟲がじいんと鳴いている。それも、成戸の顫えがやまぬ声も、三伝が、秘かに楽しんでいる復讐の前味のように思われた。そこへ扉が開いて、泥のように酔った、左枝八郎の姿が現われた。
「ホウ、こりゃなんとしたな。一家眷族が、残らず一堂に揃って、鉛色の顔をしておるが」
左枝の、支える側から流れてゆく、跫音のみが高く、この一座はあまりにも閑そりとしていた。お勢の、壁虎の背のような怨み深げな顔……、成戸の、打算に長けた白々とした眼も……苦々しく、打衝かり合うが、言葉は出ない。
「それは、三伝がね」
お悦はいまの話も、どうやら成戸の細工のように考えているらしい。
「あたいは、何が何だかいっこうに分らないんだけど、とにかく成戸さんが、ドロドロだって云うんだからね。莫迦にしてるじゃないの。高坂三伝が、三伝が生きてるんだって。三伝が、死んで四日目に銀行へ現われたんだとさ」
「そうか、ついでに何かと思ったら、お化け話か。三伝が、三伝が現われた、死んだはずの、高坂三伝が、蘇ったときたな」
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