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そして、暁子の怖し気な眼を見やりながら、
「なるほど子供は、自分の血と肉を分けた、一部に違いありません。だがもし、その愛と同じ程度の、憎しみが傍にあるとしたらどうなりましょう。そうなると、母親の残虐性は、もはや心理上の謎ではなくなってしまうのですよ。僕は思い切って云いますが……」
と云いかけたときに、暁子は、聴くまいとするものの如く立ち上った。そして、引っ痙れた顔を、法水にピタリと据えて、
「よろしい、私は自分自身で、風間を探し出しますわ。でも貴方は、私に斯う仰言りたいのでしょう。お前は、吾が子の死の悲しみを忘れ、そうしてまでも、自分だけを庇おうとする――って。結局、風間を突き出すのが、一番いい方法だと云う事は、私にもようく分っているんですの」
そうして、暁子は去ってしまったが、今の問答は何んとなく、法水の詭弁のように思われた。四人をほしいままに踊らせたと云うのも、それぞれに底を割ってみれば、風間を捜し出す、前提に過ぎないのではないだろうか。
然し、それまでに宏壮な場内を、隅々までほじり散らしたにも拘らず、遂に風間は発見されなかった。そして、事件の第一日は空しく終ってしまった。
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