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日本は何処へ行つても日本だといふことを私は近頃ますます強く感じる。が、それと同時に、同じ日本でありながら、処によつてかうも違ふものかといふ印象を受ける場合がまた極めて多い。
お互日本人は誰でもさうだと思ふが、この二つのことを少しも矛盾として受けとらない。おそろしく違ふもののなかに、根本的に共通したものを自然に嗅ぎ分けることができる。
すべてがたゞ一つの目的に向はねばならぬ時代、小異を捨てて大同につけと云はれる時代に、ことさら地方々々の特殊性を云々するのも、さういふ自信のうへに立つてでなければなるまい。
さて、問題は文学に関してである。
本誌は私に「地方文学」について書けと命じるのだが、「何々文学」といふ名称を、私は概して好まぬから、少しばかり躊躇した。しかし、編輯者の意のあるところを汲めば、これは徒らな掛け声に終るべきものではなく、また、何ものかが為にするところあつて作つた名称でもないらしい。殊に、日本の現代文学が、この苦難の時代に雄々しく立ち向ふすがたの一つであるといふこともわかつた。
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