bakani
亮太郎 馬鹿に褒めるね。あいつは、案外、角が取れてゐるよ。もつとゴツゴツしてるかと思つたら……君なんかには、なかなか優しさうぢやないか。 あや子 ええ、それや優しいの。あなたのお話ぢや、どんなこはい方かと思つたわ。ただ、物を言ふのがお嫌ひね。どうかすると唖みたい。何を言つても、首を振るだけなの。張合ひがないつたら……。少し、恥かしいのね。まだ、子供よ。 亮太郎 さうか知ら……だけど、何か君、見たつて言つてたぢやないか、二三日前……。 あや子 あれは、あなた……それや、子供つて言つたつて、丸つきり子供ぢやないんですもの……。それくらゐのこと……。でも、あれを見て、あたし、ほんたうに綺麓なものを見たやうな気がしたわ。 亮太郎 綺麗なものか……。つまり、ロマンスにしてゐるのさ、君の方で……。 あや子 それはどうでもいいの。なんだか、あたしたちのさういふやうなものと、全く違つた種類の……別の世界にでなければないやうな、――だと思つたわ。 亮太郎 そんな大袈裟なものぢやないんだらう。――二十三にもなれば、男の恋愛は空想でなくなるよ。――誰もゐない川つ縁で、魚の泳ぐのを見てるやうなふりをして、そこへ来かかつた女の子を、呼び止めて見るぐらゐの度胸はついて来る。そればかりぢやない。何か手渡ししてたつていふぢやないか。 あや子 もう止しませう、そんな穿鑿は……。あたし、そんなつもりで言つたんぢやないの。ただ、さういふところを見て、自分でハツと顔を赧らめるやうな、そんな印象を受けなかつたことが不思議に思へたからなの。つまり、それほど現実ばなれがしてたんだわ。あの女の子、なんていふ名かしら……。何処の子かしら……。落葉掻きの帰りらしいのよ。 亮太郎 ますます詩的ぢやないか。パストラルだね。 あや子 さうよ……。なに、そんな笑ひ方して……。いやな方ね。(間)また少し歩いてみないこと、その辺……。さうさう、あたしと一緒に歩くのは、何んとかつて言つてらしつたわね。
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